⒐森田

 

ホテルへ移ってからも森田はなにかと気にかけてくれた。現地の情報や心得を教えてくれ、ロサンゼルスにいた2週間強のあいだ週末ごとに車で迎えに来て面白そうな場所を案内してくれたりした。最初の土曜日はホテルニューオータニのロビーで落ち合いハリウッドへ向かった。フリーウエイを走ってしばらくすると、「おっ、あれあれ!」と森田が窓の外を見るよう促した。そこには山並みに立てられた〝HOLLYWOOD〟の白い文字看板があった。見たことのある景色だ。Billy Joelのアルバムのジャケットだったか・・・。  本当にアメリカに来たんだなと思った。チャイニーズシアターで有名人の手形を見た後UCLAへ行き、夜はリトルトーキョーでかつ丼を食べた。森田は日本食が恋しくて毎週末リトルトーキョーへ通っているそうだ。

 

翌週は金曜日と土曜日の2回出かけた。金曜日はアナハイムのディズニーランドへ行った。意外に来園客は少なかった。そのためかどうか多くのアトラクションが中止となっていた。スペースマウンテンが止まっていたのは少し残念だった。

 

土曜の夜はサンタモニカへ飲みに行った。この辺りは治安が良いみたいで、日本と変わらぬ賑わいようだ。みんな楽しそうに騒いでいた。パブを2軒はしごした後ディスコへ行った。まるで映画サタデーナイトフィーバーのような大変な盛り上がり方だ。超満員でとても長くいられる状態ではない。早々に店を後にした。

 

夜のビーチに座ってビールを飲んでいると、「おいおい、本当にここはアメリカなんか?日本と全然かわらんがな。皆がおったら今頃焚き火を始めるとるんじゃねえか」と森田が笑いながら言った。海を見ながら飲むビールはうまかった。その夜ホテルに帰ったのは午前2時半だった。