季節外れの台風接近による大雨のなか春日大社に参拝しました。
前日から大阪に滞在していた私はこの日奈良に移動する予定だったが、朝ニュースをみると兵庫、大阪、京都、和歌山と、奈良を除いた近畿地方一帯に大雨警報が発令されており、電車もいつ停まるかわからない様子。
午後に向けて雨量が増すことは分かっているので、予定通り奈良に行ってもホテルに缶詰めになるのがおちだろう。予定を変更して、新幹線が止まる前に東京に帰るか、宿泊中のホテルに延泊して台風をやりすごすかのどちらかが現実的だろうと、この時は思っていたのだが…
一応現地の状況を確認のうえ決めようと思い、予約したホテルに電話したところ、「こちらは特に変わったことはありません。お待ちしています」との返答。予想外の言葉に出鼻をくじかれた。
とりあえず様子を見ようと大阪駅に行ってみると、なにごともなく電車が動いており、環状線は通勤や通学の乗客で大変な混雑ぶり。鶴橋で乗り換えた近鉄線も混んでいる。全てが平常運転だ。
ホテルに着いたのは9時頃。「山に囲まれているせいか台風の影響を受けにくく、周りの府県に警報が出ても奈良だけ出ないことが多いんですわ」とフロントのかたは平然とした様子。だが、荷物を預かってもらい外に出てみると雨は本降り。念のためスマホで確認すると奈良にも大雨警報が発令されていた。「やっぱり奈良にも大雨警報が出とるやん」と、思わずツッコんでしまった。
興福寺に行ってみると、ここも平常運転。受付のかたも「わたしらよほどのことがなきゃ閉めたりしませんわ」と頼もしい言葉。もちろん拝観者は少なく館内はがらがらで、見学にはある意味最高の環境。
阿修羅像をこんなにゆっくり見たのははじめてだった。
国宝館を出たときには雨は土砂降りで、奈良公園もところどころが水浸し、雨水が川のように流れて道を歩くのにも一苦労、鹿も木陰に避難している、という悲惨な状態だった。
さすがに引き返そうとホテルに向かって歩いていると、人力車の車夫さんに声をかけられた。東京から来たというと、東大寺と春日大社を参詣せずに帰るなんてもったいない、絶対行くべきだと熱心に勧められ、帰りづらくなったため再び方向を変えた。
本当に大丈夫なのかと思いつつ土砂降りの中をたどり着いた東大寺と春日大社で見た光景は、確かに素晴らしいものだった。
特に春日大社は人がほとんどおらず、静寂と清々しい空気に包まれた別世界で、雨に洗われて全てが美しく輝いており、神々しという言葉がぴったりの厳かな空間だった。
この日に来て本当によかったと心から思いました。
参拝のあと、一息入れようと参道の春日荷茶屋(かすがにないぢゃや)に入り、地酒の春日諸伯を飲みました。落ち着いた風情のあるこの老舗も普段は混みあっているのだと思うが、大雨のせいで客は私一人の貸し切り状態。
熱燗で心も体も温まり疲れが一気にとれました。
こんなときに参拝したからこそいただけるご褒美もあるのですね。思わぬ至福の時を得ました。
背中を押してくれた奈良の方々に心から感謝です。
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