61.夢の島ハワイ

 

森田と会った2日後の24日、僕はロサンゼルスを後にした。帰路はハワイ、ソウルの2か所でトランジットの後、帰国というルートにした。格安チケットの悲しさでフライトの時間は早朝に設定されている。僕はエアポートバスに乗るためにダイマルを4時ごろに出た。あたりは真っ暗で誰も歩いていない。バス乗り場のニューオータニまでは歩いて5分程度なのだが、何しろ治安の悪いエリアだとの思いもあり結構緊張した。

 

バス停でバスを待っているとボロボロのタクシーが目の前に泊まって空港までバスと同じ料金で乗せてやると言った。当然断った。メキシカンの運転手は同じ料金ならタクシーのほうがいいだろう。なんでだ。と食い下がったが。もう一度僕がノーサンキューというと諦めて走り去った。申し訳ないけどここに来てトラブルの可能性はできるだけ避けたい。このドライバーは僕がメキシコで会った人たちとは別人なのだ。

 

ロサンゼルスを飛び立って7時間後に僕の乗った大韓航空機はホノルルに着いた。空から見るハワイの海はきれいだった。ここが憧れの夢の島、ハワイか。ハワイには1泊する予定だ。

 

空港からワイキキに向かうバスは観光客で満員だった。アメリカ人が多いように見える。皆目を輝かせて楽しそうに窓の外を見て写真を撮ったり話したりしている。やはりハワイはアメリカ人にとっても特別な場所なのだろう。ホテルはワイキキのはずれにあるアロハサーフホテルに決めた。キッチン付きツインルームで一泊26ドルと値段もまずまずだ。海側の部屋ではないが小さいながらもバルコニーがありそこから運河が見えた。

 

荷物を置くと水着に着替えてビーチに行った。海で泳いでいると30歳ぐらいの男が声をかけてきた。カナダから来たのだという。しばらく話した後、これから自分の部屋に来ないかと誘ってきた。僕は時間もあまりないし、まだ行ってみたいところもあるため断った。が彼はしつこく誘ってくる。僕はその時やっと、彼がゲイなのだと気付いた。今度は強い口調で断った。

 

考えてみれば旅の間、何人ものアメリカ人が家に泊まりに来いと声をかけてくれた。僕は貧しい学生をもてなしてやろうという親切心からの誘いだとずっと思っていたのだが、もしかしたらそのうちの何人かは違う目的だったのかもしれないと、このときふと思った。

 

当初、物価の高い観光地であるハワイにはあまり興味をもっていなかった。乗り換えのついでに少し見てみようという程度の思いから1泊しか予定していなかったのだが、実際来てみるとやはり楽しい。ここにはいつか改めて来たいと思う。