3.映画館
遅めの朝食を済ませて、ダウンタウンのブロードウェイへ出かけた。映画館や商店などが集まるにぎやかな通りだが、同じブロードウェイでもニューヨークのとは違いすさんだ雰囲気だ。
ここに来たのはポルノ映画を見るためだ。これはアメリカへ行ったらやってみたいと思っていたことのひとつだ。僕は〝ⅩⅩⅩ(トリプルエックス)〟の看板を掲げた映画館のうちの一つに入った。館内は真っ暗だったが、足元の明かりを頼りに席に座った。初めのうちこそ、日本では見れないノーカット映画を大画面で見ているんだ、という感動めいたものもあったが、ストーリーがあるわけでもなし、しばらくすると飽きてきた。やはり何事も実現するまでが楽しいのだろう。
目が慣れてきたので周りを見渡してみた。平日の昼間のせいもあるだろうが客はあまりいないようだ。床にはごみがころがっており薄汚いという表現がピッタリだ。なにやらごそごそと客席も落ち着かない雰囲気だ。
館内がどうなっているのか興味がわいたので、トイレにでも行ってみようと席を立った。通路への出入口に背の高い人が1人立っていた。非常灯の明かりでちらっと見ただけなので、顔はよくわからなかったが黒人のようだ。190センチぐらいはあっただろうか。トイレは汚かった。出口に向かうと、さっきのでかい黒人が立っていた。こちらを見ている。ショッキングピンクのピタッとしたワンピースを着ている。
どうやら女性(女装した男性?)のようだ。後をつけてきたのだろうか・・・ と思った瞬間、そのでかい女はおもむろにミニスカートをたくし上げて下着をこちらに見せた。それから自分の股間を指さしながら、「○○ダラー、○○ダラー」(○○は金額。いくらだったかは忘れた)と大きな太い声で連呼し始めた。まさに「ヒェ~」で、必死の思いで彼女の横を駆け抜けた。席へ戻ってしばらくの間、ふ~ん、こっちではああいうのは違法じゃないのか・・。とか、日本では中々できない経験ではあったなぁ。などと、どうでもいいことをぼ~っと考えた。