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’80s アメリカの旅53

47.ハラパ

 

バスは12日の正午にダミアンの住むハラパに到着した。正直に言うと僕は最初ダミアンの家へ行くかどうか迷っていた。米国でも何度も家に泊まりに来いと誘われたことがあった。そのたびに僕は断っていた。彼らは皆裕福そうで確かに人を泊めるぐらいの大きさの家に住んでいそうに見えた。だがゆきずりのよくわからない外国人の家に泊まりに行くのはさすがに危険だと思った。ダミアンはとても裕福には見えない。ただポクナで本当にいい人だと感じていたし、熱心に誘ってくれたので断れなかった。本当に大丈夫なんだろうかいう不安はあったが、とりあえず顔を出して、やばそうだったらすぐ退散しようと決めた。

 

ダミアンにもらった家の住所をもって街をうろうろしていると、若い女の子が声をかけてきた。知り合いの家を探していると言うと住所を教えろと言う。メモを見せると、近所だから連れて行ってやると言う。彼女の名前はエレナ。大学生で、年は20才ぐらいだろうか。英語がうまい。色白で笑顔が優しい美人だ。控えめな感じで照れ臭そうに話す。歩きながら街のことを親切に教えてくれた。

 

ダミアンの家は歩いて78分の坂の途中にあった。大きくはないが小奇麗な平屋の1軒家だった。エレナが玄関で呼びかけるとすぐにダミアンが出てきた。僕を見ると満面の笑みで両手を広げて迎え入れてくれた。家に入ると奥さんのベルタが僕を明るい笑顔で迎えてくれた。美人だ。その瞬間それまでの不安が吹き飛んだ。こんなきれいな奥さんがいる人ならすごい人に違いないと直感的に思えた。げんきんなものだ。きれいな奥さんがいるというのはすごいことだ。

 

エレナがスペイン語で何か話している。おそらく自己紹介と僕を案内してくれた経緯なのだろう。別れ際僕に連絡先のメモを渡して自分の家はここから近いから是非遊びに来てくれと言った。そして僕の頬にキスをして恥ずかしそうに手を振りながら出て行った。僕はどうしていいかわからずボー然とエレナを見送った。横を見るとベルタが笑っていた。

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