⒕シカゴ(2)
やっとシカゴに着いた。長く寝たおかげで体調は万全だといいたいところだが、やはり何となく体が重い。外に出ると高層ビルが立ち並んでおり、その陰で薄暗いほどだ。シカゴは歴史的な建造物が多く、凝ったデザインのビルが多いことで有名だ。建築好きにはたまらなく魅力的な場所だそうだ。素人の僕が見てもかっこいいと思う建物が多い。しかしここもとにかく寒い。歩いていると、そこかしこでマンホールの蓋から真っ白い湯気が立ち上っている。またビルの至るところから蒸気が立ち上るのが見える。空は灰色でどんよりと曇っている。雪こそ降っていないがソルトレイクシティを上回る寒さだ。
シカゴでは是非行ってみたいところがある。世界一の高層ビル、シアーズタワーだ。なんと120階建だ。早速チケットを買いエレベーターで最上階へ上った。しかし残念なことに最上階の展望ルームからは何も見えなかった。窓の外は真っ白だった。曇り空の為ビルに雲がかかっていたのだ。残念ではあったがビルが雲を突き破っているとはさすがだ。こんなのは日本ではお目にかかれない。これはこれでいい経験ではある。記念に近くにいた観光客にシャッターを押してもらい写真を1枚とった。背景の窓は真っ白だ。
今日の宿は「トーキョーホテル」、1泊20ドル。真っ黒のかなり年季の入った建物だが、街の中心にあり立地がいい。エレベーターは古く、驚いたことにドアが手動だ。オペレーターがいて開け閉めをしてくれる。こんなのに乗ったのは初めてだ。さらに驚いたことには運転も手動だった。行先を告げるとオペレーターがエレベーターの内側に付いたハンドルをぐるぐる回して運転するのである。どういう仕組みなのか分からないがハンドルを回している間は動き、回すのをやめると停止した。ここまで完全マニュアル式のエレベーターに乗ったのは後にも先にもここでだけだった。
部屋は15階の2号室だった。窓からの景色が抜群で、真正面にビッグジョンが見える。長いバス旅の果て、シャワーを浴びて、ビールを飲みながらきれいな夜景を見る。思いがけない贅沢な時間になった。このときの景色は僕の心に長く焼きついた。ぼろぼろだった部屋の記憶はすぐに薄れたが、この夜景の美しさはずっと覚えている。
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